平成27年度から毎月2回、高崎市内の高齢者の方が集まる場所で遺言や相続の豆知識のお話をさせていただいています。遺言書の作成について色々な意見を聞きますが、生の声として、「遺言書を残すほど財産がないから必要ない。」と考える方が多いですね。財力のある資産家やお金持ちが遺言書を残すイメージが強いようです。また、「遺言を残しても残さなくても、財産の分け方に変わりがないのなら残さなくてもいいよね。」と考えられている方もいらっしゃいます。
僕は、市役所や支所でも毎月1回遺言と相続の市民無料相談会も行っています。
遺言書があればもっとスムーズに事が進んだのになぁと感じる相談も少なくありません。
やったほうがいいものを、やらなかったことで、遺族が思わぬ苦労をしてしまっている図式を何十件と見てきました。
遺言は死期が近づいてからするものと思っている人がいますが、それも全くの誤解です。人はいつ何時、何があるかも分かりません。本人の判断能力がなくなってからでは残せません。遺言をする前に死んでしまっては後の祭りで、そのために家族の悲しみが倍加する場合もあることでしょう。残された家族が困らないように配慮しておくこと、自分が元気なうちに、愛する家族のために、自分に万一のことがあっても残された者が困らないように、遺言を作成しておく。それが家族への最大の思いやりであり、最後の言霊であり道標であると僕は考えます。最近では、若い人でも海外旅行へ行く前等に遺言書を作成する例も増えています。また子供がいないので団体へ寄付をしたい、お世話になった方へ遺贈したい等の思いを叶えるのにも遺言書が必要です。
遺族にとって、貴方の人生の締めの言葉となる遺言、一度考えてみてはいかがでしょうか。
遺言者の将来への備えについて、お話します。
日頃、僕が言葉を交わす相談者は、ご家族やお孫さんがいらっしゃる方ばかりではありません。お子さんがいない又は遠方でなかなか会えない、配偶者は亡くなってしまった、兄弟姉妹もいない等、高齢者独居の方もたくさんいらっしゃいます。そのような方には、公正証書遺言だけでは拭いきれない不安の解消のため、以下のお話をさせていただいております。
通常の委任契約を任意後見契約と同時に締結し、当初は前者に基づく見守り事務、財産管理を行い、本人の判断能力低下後は任意後見に移行し、後見事務を行うという形態です。
これは、現在はまだ判断能力が低下していないが、将来、病気や足腰が弱ってきて日常生活が不自由になる不安、認知症への不安を払拭するための契約といえます。
死後事務委任契約とは、遺言者本人が第三者(個人・法人を含む。)に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。
死後の事務内容として、
① 医療費の支払いに関する事務
② 家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
③ 老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務
④ 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
⑤ 菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
⑥ 永代供養に関する事務
⑦ 相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
⑧ 賃借建物明渡しに関する事務
⑨ 行政官庁等への諸届け事務
⑩ 以上の各事務に関する費用の支払いがあります。
※ 詳細については当事務所へ直接お問い合わせください。
遺言書には、主に「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」があります。
ここでは公正証書遺言を中心に説明します。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です(民法969)。
遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。
(1)公正証書遺言のメリット
(2)公正証書遺言のデメリット
自筆証書遺言は、遺言者が自ら紙に遺言の内容の全文(目録を含むすべて)を手書きし、かつ、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成する遺言です。全て自書しなければならず、パソコンやタイプライターによるものは無効です。
(1)メリット
自分で書けばよいので、費用もかからず、いつでも書けます。
(2)デメリット
内容が簡素な場合はともかく、複雑な場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまう場合もあります。
また、誤りを訂正した場合には,訂正した箇所に押印をし、さらにどこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名しなければならないなど方式が厳格なので、方式不備で無効になってしまう危険もつきまといます。また自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が必ず家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければなりません。さらにこれを発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどには、破棄したり隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険がないとはいえません。また、自筆証書遺言は全文自書しないといけないので、当然のことながら病気等で手が不自由になり字が書けなくなった方は利用することができません。
秘密証書遺言は、遺言者が遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、パソコン等を用いても、第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上でこれを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人がその封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです。
(1)メリット
上記の手続を経由することにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができます。
(2)デメリット
公証人はその遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性がないとはいえません。また、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て検認手続を受けなければなりません。また、費用もかかります。
遺言により、法定相続人に財産が相続されない状況となった場合、又は法定分をかなり下回る財産しか相続できなかった場合、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する遺留分(いりゅうぶん)という制度が規定されています。
相続人の遺留分を侵害する遺言も、当然に無効ではありません。遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由であり、自己の遺留分範囲財産の返還を請求する遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせきゅう)が行使されるまでは、有効な遺言として効力を有します。
しかし、遺留分を侵害された相続人が、遺留分減殺請求権を行使すると、遺留分を侵害している者(受遺者や特別受益者等)は、侵害している遺留分の額の財産を遺留分権利者に返還しなければならず、返還する額をめぐって裁判となるケースも多く見受けられます。
遺言書がトラブルの元にならないように、各相続人の遺留分を考慮した遺言書を作成したほうがよいでしょう。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与や遺贈があったことを知った時から1年間です。また、相続開始から10年間経過したときも同様に権利行使できなくなります。
●相続財産に対する各相続人の遺留分について | |
子と配偶者が相続人 | 子が4分の1、配偶者が4分の1 |
父母と配偶者が相続人 | 配偶者が3分の1、父母が6分の1 |
兄弟姉妹と配偶者が相続人 | 配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし |
配偶者のみが相続人 | 配偶者が2分の1 |
子のみが相続人 | 子が2分の1 |
直系尊属のみが相続人 | 直系尊属が3分の1 |
兄弟姉妹のみが相続人 | 兄弟姉妹には遺留分なし |
民法974条に定めがあり、
① 未成年者 ② 推定相続人(遺言者が亡くなったら相続人になれる立場にある人)、受遺者(遺言により財産を貰う人)及びその配偶者並びに直系血族 ③ 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇い人は証人になれません。特に②は、直接利害のある推定相続人、受遺者だけでなく、その配偶者や直系血族も証人となることができないため、いわゆる身内では証人になれないということです。証人の資格がない人を証人に立てると遺言が無効になりますので注意が必要です。口の軽い証人だと、遺言の内容が他に漏れる可能性があるので、その点も注意が必要です。適当な証人が見当たらない場合には、当事務所にて秘密を厳守し信頼できる人を紹介致します。
誰でもできますが、相続人同士の利害関係が生じる場合もあることから、第三者の就任をお勧めします。
遺言書による子の認知・相続人の廃除及びその取り消しを除き、遺言執行者がなくても、相続人が遺言の内容を実現することは可能ですが、手続を円滑に進めるためには、遺言執行者を指定しておきましょう。遺言執行者は、未成年者及破産者以外であれば相続人でもなれ(1009条)、いないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができ(1010条)、遺言に定めた報酬または家庭裁判所の定める報酬を受けます(1018条)。遺言執行者は相続人の代理人とみなされ(1015条)、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができません(1016条)。 遺言執行者が数人いる場合には、その任務の執行は、原則として過半数で決しますが、単独でも保存行為はすることができます(1017条)。
ここでは、遺言者が行政書士に依頼して公正証書遺言を作成する手順を説明します。
業務依頼される場合には、下記の資料を準備いただくと打ち合わせがスムーズに進行すると思います。なお、事案に応じ、他にも資料が必要となる場合もありますが、詳細はお問い合せ下さい。
日頃、遺言について様々なご相談を受理する行政書士として、結論として公正証書遺言をお勧めしています。一番の理由は、遺族がスムーズにしっかりとした遺言を受けられるからです。自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認手続きを受けなければならず、遺言自体を本当に本人が書いたのか否か、内容も法的に沿ったものかどうかの判断もしなければなりません。遺言を隠されたり、書き換えられてしまうリスクもあります。遺族の手間や心労負担も考慮すると、作成時に費用は掛かりますが、法曹界に長年携わった熟練の先生が法的に担保されたものを内容とした公正証書遺言の作成がベストな選択と言えます。
相続又は遺贈を受ける1人当たりの財産の金額で計算します。
(1)基準手数料
相続又は遺贈を受ける各人の金額を上記の表で算出し、全員で合計した手数料の 総額です。
(2)遺言加算
全体の財産が1億円以下の場合は、基準手数料の金額に、11,000円が加算されます。
(3)原本・謄本等手数料
遺言書は通常、原本・正本・謄本を各1部作成します。原本は法律に基づき公証役場で保管、正本と謄本は遺言者に交付しますが、原本についてはその枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。正本と謄本の交付にも1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。
(4)公証人の出張費
遺言者が病気又は高齢等のために公証役場に赴くことができず、公証人が病院や自宅、老人ホーム等に赴いて公正証書を作成する場合には、上記基準手数料が50%加算されるほか、公証人の日当と現地までの交通費がかかります。
(5)行政書士報酬
遺言案文作成費用、相続人・相続財産調査費用、証人費用等が発生します。
詳細はお問い合わせください。
公正証書遺言 | 自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
遺言作成者 | 公証人 | 遺言者本人 | 遺言者本人(代書可) |
作成日 | 公証人が記載 | 遺言者本人が自筆記載 | 公証役場で遺言者本人が署名した日 |
署名・押印 | 遺言者、証人、公証人 | 遺言者本人 | 遺言者本人 |
証人 | 2名 | 不要 | 2名 |
保管者 | 原本:公証役場正本:本人謄本:遺言執行者 | 遺言者本人又は遺言者が保管を依頼した者 | 遺言者本人又は遺言者が保管を依頼した者 |
変造・紛失の可能性 | なし | あり | あり |
家庭裁判所の検認手続き | 不要 | 要 | 要 |
費用 | かかる | かからない | かかる |